<> 「たのしみは 春夏秋冬季語に逢ひ 詩歌管絃游びゐるとき」 @歌童 篠原梵

篠原梵俳句集1

 皿

寒き燈(ひ)にみどり児の眼は埴輪の眼

冬日蹴るくびれのふかき勁(つよ)き足

掌の中に吾子の手雀の子のごとし

燈ともせば闇はただよふ寒さとなれり

燈に読むにうしろさむざむ影の立つ


寒燈やわれ蓬髪の影とつながる

麦の畝集まりゆきて丘を越す

青麦野一路ふるさとびととなる

やはらかき紙につつまれ枇杷のあり

頭影テントをなかば占めうごく

篠原梵俳句集2

水底にあるわが影に潜りちかづく

肩の汐ぬくくつたはり中指より落つ

海の奥のかすみのひかるところ隠岐

聞くうちに蟬は頭蓋の内に居る

カンカン帽ゆゑに目に立つ頬骨なる


ゆふぐれと雪あかりとが本の上

肩を越す木瓜のまぶしき中通る

掌をひろげ青麦の風受けていく

葉櫻の中の無数の空さわぐ

麻の服風はまだらに吹くをおぼゆ

篠原梵俳句集3

見るうちに菊のましろさ眼よりあふれぬ

冬の木の幹のけはひの闇に満つ

枯芝にこもる日ざしを背に吸ふ

北風と同じ速さに歩きゐしなり

篠原梵俳句集4

 雨

秋雲の白き見つづけ部屋くらし

すぐに木を変へつつひぐらし庭にゐる

麦刈りし畑かさなりて島となる

稲の青しづかに穂より去りつつあり

月光に冬菜のみどり盛りあがる


わが影の芽麦に入りしところそよぐ

雪解田に空より青き空のあり

幹の間(あひ)とほくの幹に月させる

春の雨記憶の中の江にも降る

夕立に小石のふえし道帰る

篠原梵俳句集5

冬の雨崎のかたちの中に降る

マスクして北風を目にうけてゆく

頭のみ日かげに入れて本を読む

硬きまで乾きしタオル夏日にほふ

いてふちりしける日なたが行手にあり


日向居につぎの柱の影が来ぬ

投げ上げし石が西日をおびて落つ

雪山の風来るまでにちかづきぬ

舟べりにのぞく深水(ふかみ)を鮎通る

淡水のきめにつつまれ立ち泳ぐ

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