山頭火俳句集1
分け入つても分け入つても青い山
石に腰を墓であったか
放哉居士の作に和して
鴉啼いてわたしも一人
へうへうとして水を味ふ
ほろほろ酔うて木の葉ふる
どうしようもないわたしが歩いてゐる
捨てきれない荷物のおもさまへうしろ
秋風の石を拾ふ
酔うてこほろぎと寝てゐたよ
越えてゆく山また山は冬の山
石に腰を墓であったか
放哉居士の作に和して
鴉啼いてわたしも一人
へうへうとして水を味ふ
ほろほろ酔うて木の葉ふる
どうしようもないわたしが歩いてゐる
捨てきれない荷物のおもさまへうしろ
秋風の石を拾ふ
酔うてこほろぎと寝てゐたよ
越えてゆく山また山は冬の山
山頭火俳句集2
うしろすがたのしぐれてゆくか
鉄鉢の中へも霰
笠へぽつとり椿だつた
あるけばきんぽうげすわればきんぽうげ
雨ふるふるさとははだしであるく
ゆふ空から柚子の一つをもらふ
父によう似た声が出てくる旅はかなしい
雪へ雪ふるしづけさにをる
やつぱり一人がよろしい雑草
藪柑子もさびしがりやの實がぽつちり
鉄鉢の中へも霰
笠へぽつとり椿だつた
あるけばきんぽうげすわればきんぽうげ
雨ふるふるさとははだしであるく
ゆふ空から柚子の一つをもらふ
父によう似た声が出てくる旅はかなしい
雪へ雪ふるしづけさにをる
やつぱり一人がよろしい雑草
藪柑子もさびしがりやの實がぽつちり
山頭火俳句集3
病めば梅ぼしのあかさ
ころりと寝ころべば空
青葉の奥へなほ小径があつて墓
こころむなしくあらなみのよせてはかへす
あるけばかつこういそげばかつこう
月からひらり柿の葉
うまれた家はあとかたもないほうたる
春風のどこでも死ねるからだであるく
木の実かさなりあうてゆふべのしづけさ
ひとり山越えてまた山
ころりと寝ころべば空
青葉の奥へなほ小径があつて墓
こころむなしくあらなみのよせてはかへす
あるけばかつこういそげばかつこう
月からひらり柿の葉
うまれた家はあとかたもないほうたる
春風のどこでも死ねるからだであるく
木の実かさなりあうてゆふべのしづけさ
ひとり山越えてまた山
山頭火俳句集4
春もすつかり鶯うまくなつた
さすらひの果はいづくぞ衣がへ
軒からぶらりと蓑虫の秋風
石ころに陽がしみる水のない川
山のよさを水のうまさをからだいつぱい
山ふかくして白い花
いちいち物言はず波音
まぶしくもわが入る山に日も入つた
老木倒れたるままのひかげ
わが手わが足あたたかく寝る
さすらひの果はいづくぞ衣がへ
軒からぶらりと蓑虫の秋風
石ころに陽がしみる水のない川
山のよさを水のうまさをからだいつぱい
山ふかくして白い花
いちいち物言はず波音
まぶしくもわが入る山に日も入つた
老木倒れたるままのひかげ
わが手わが足あたたかく寝る
山頭火俳句集5
秋風あるいてもあるいても
塵かと吹けば生きてゐて飛ぶ
活けて雑草のやすけさにをる
おちついて死ねさうな草萌ゆる
六十にして落ちつけないこころ海をわたる
ゆく春の夜のどこかで時計鳴る
こしかたゆくすゑ雪あかりする
塵かと吹けば生きてゐて飛ぶ
活けて雑草のやすけさにをる
おちついて死ねさうな草萌ゆる
六十にして落ちつけないこころ海をわたる
ゆく春の夜のどこかで時計鳴る
こしかたゆくすゑ雪あかりする