<> 「たのしみは 春夏秋冬季語に逢ひ 詩歌管絃游びゐるとき」 @歌童 中興期(白雄等)

中興期1

 炭太祇
川下に網うつ音やおぼろ月
ふらこゝの会釈こぼるゝや高みより
やぶ入の寐るやひとりの親の側
うつす手に光る蛍や指のまた
角出して這はでやみけり蝸牛
飛石にとかぎの光る暑さかな
初戀や燈籠によする顔と顔
脱ぎすてゝ角力になりぬ草の上
冬枯や雀のありく樋の中
寒月や我ひとり行く橋の音


 大島蓼太
世の中は三日見ぬ間の櫻かな
我が影の壁にしむ夜やきりぎりす
岩端の鷲吹きはなつ野分かな
蝶ひとつ菊に喰入る日和かな
更くる夜や炭もて炭をくだく音
ともしびを見れば風あり夜の雪

中興期2

 高桑闌更
月の夜や石に登りて啼く蛙
鵜の面(かほ)に川波かゝる火影哉
大木を見てもどりけり夏の山
雨乞や火影にうごく雲の峰
秋立つや店にころびし土人形
水有りや家鴨の覗く萩の下
枯蘆の日に日に折れて流れけり

 加藤曉臺
湖の水啼きこぼす蛙哉
かげろふにゆらるゝけしのひとへかな
鷹の眼の水に居(すわ)るや秋のくれ
九月盡遥かに能登の岬かな
暁や鯨の吼ゆるしもの海

 三浦樗良
すかし見て星にさびしきやなぎ哉
山里や屋根へ来て啼く雉子の聲
さくら散る日さへゆふべと成にけり

中興期3

 黒柳召波
地車に起き行く草の胡蝶哉
子の顔に秋かぜ白し天瓜粉
怪談の後ろ更け行く夜寒哉
傘(からかさ)の上は月夜のしぐれ哉
寺深く竹伐る音や夕時雨
憂きことを海月に語る海鼠哉

 高井几董
青海苔や石の窪みのわすれ汐
嵐して藤あらはるゝわか葉哉
やはらかに人分け行くや勝ち角力
かなしさに魚喰ふ秋のゆふべ哉
冬木だち月骨髄に入る夜哉

中興期4

 加舎白雄
人戀し灯ともしごろをさくらちる
子規なくや夜明の海がなる
園くらき夜を静かなる牡丹かな
さうぶ湯やさうぶ寄りくる乳のあたり
めくら子の端居さびしき木槿哉
秋の夜を小鍋の泥鰌音すなり
鶏の嘴に氷こぼるゝ菜屑かな 

 松岡青蘿
蝶ひとつ竹に移るや衣がへ
角あげて牛人を見る夏野かな
白菊に赤みさしけり霜の朝

 吉川五明
朧夜や氷離るゝ岸の音
流れ来て氷を砕く氷かな
牽き入れて馬と涼むや川の中

 大伴大江丸
秋来ぬと目にさや豆のふとり哉

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