前田普羅俳句集1
面体をつゝめど二月役者かな
如月の日向をありく教師哉
春更けて諸鳥啼くや雲の上
春尽きて山みな甲斐に走りけり
雪解川名山けづる響かな
月出でて一枚の春田輝けり
絶壁のほろほろ落つる汐干かな
花を見し面(おもて)を闇に打たせけり
潮蒼く人流れじと泳ぎけり
月さすや沈みてありし水中花
如月の日向をありく教師哉
春更けて諸鳥啼くや雲の上
春尽きて山みな甲斐に走りけり
雪解川名山けづる響かな
月出でて一枚の春田輝けり
絶壁のほろほろ落つる汐干かな
花を見し面(おもて)を闇に打たせけり
潮蒼く人流れじと泳ぎけり
月さすや沈みてありし水中花
前田普羅俳句集2
羽抜鳥高い巖に上りけり
人殺す我かも知らず飛ぶ蛍
夏草を搏ちては消ゆる嵐かな
新涼や豆腐驚く唐辛
いづこより月のさし居る葎かな
秋出水乾かんとして花赤し
秋出水高く残りし鏡かな
虫なくや我れと湯を飲む影法師
落ち落ちて鮎は木の葉となりにけり
桔梗(きちこう)や一群(ひとむれ)過ぎし手長蝦えび)
人殺す我かも知らず飛ぶ蛍
夏草を搏ちては消ゆる嵐かな
新涼や豆腐驚く唐辛
いづこより月のさし居る葎かな
秋出水乾かんとして花赤し
秋出水高く残りし鏡かな
虫なくや我れと湯を飲む影法師
落ち落ちて鮎は木の葉となりにけり
桔梗(きちこう)や一群(ひとむれ)過ぎし手長蝦えび)
前田普羅俳句集3
人の如く鶏頭立てり二三本
葛の葉や飜るとき音もなし
鷹とんで冬日あまねし竜ヶ嶽
干足袋を飛ばせし湖の深さ哉
寒雀身を細うして闘へり
落葉して蔓高々と懸りけり
オリオンの真下春立つ雪の宿
立春の暁の時計鳴りにけり
卵売り春の寒さを来りけり
鞦韆に(ぶらんこ)にしばし遊ぶや小商人(こあきんど)
葛の葉や飜るとき音もなし
鷹とんで冬日あまねし竜ヶ嶽
干足袋を飛ばせし湖の深さ哉
寒雀身を細うして闘へり
落葉して蔓高々と懸りけり
オリオンの真下春立つ雪の宿
立春の暁の時計鳴りにけり
卵売り春の寒さを来りけり
鞦韆に(ぶらんこ)にしばし遊ぶや小商人(こあきんど)
前田普羅俳句集4
鳶鴉闘ひ落ちぬ濃山吹
大寺のうしろ明るき梅雨入かな
梅雨の海静かに岩をぬらしけり
菱刈りの面(おもて)を叩く夕立かな
立山のかぶさる町や水を打つ
油蝉朴にうつりて鳴かざりき
町を出てみな高声や蛍狩
枯野来し人の指環の光りけり
簗くづす水勢来りぬ石叩き
鳴き負けてかたちづくりす囮(をとり)哉
かへり来て顔みな同じ秋の蜂
大寺のうしろ明るき梅雨入かな
梅雨の海静かに岩をぬらしけり
菱刈りの面(おもて)を叩く夕立かな
立山のかぶさる町や水を打つ
油蝉朴にうつりて鳴かざりき
町を出てみな高声や蛍狩
枯野来し人の指環の光りけり
簗くづす水勢来りぬ石叩き
鳴き負けてかたちづくりす囮(をとり)哉
かへり来て顔みな同じ秋の蜂
前田普羅俳句集5
真盛の水引を打つ大雨かな
雪卸し能登見ゆるまで上りけり
うしろより初雪ふれり夜の町
夏蜜柑肩にあたるをもがんとす
かげろふの来てさわがしき障子かな
空蝉のふんばつて居て壊はれけり
風おちて静かな田植月夜かな
芍薬の蕾の玉の赤二つ
湖に夏草を刈り落しけり
荒梅雨や山家の煙這ひまわる
雪卸し能登見ゆるまで上りけり
うしろより初雪ふれり夜の町
夏蜜柑肩にあたるをもがんとす
かげろふの来てさわがしき障子かな
空蝉のふんばつて居て壊はれけり
風おちて静かな田植月夜かな
芍薬の蕾の玉の赤二つ
湖に夏草を刈り落しけり
荒梅雨や山家の煙這ひまわる