山口青邨俳句集1
雑草園
捨て鍬の次第に濡れて春の雨
天近く畑打つ人や奥吉野
水の音聞ゆる室やあらひ鯉
春雨に鳥の古巣の濡る々ま々
まひまひの水の広さや花菖蒲
牡丹の崩れんとするに蝶来り
草を焼く煙流れて梅白し
漕ぎもどる童の舟に山葡萄
わが肩に触れたる枝の芽ぐみたる
石踏んでわたれば岩魚走りけり
捨て鍬の次第に濡れて春の雨
天近く畑打つ人や奥吉野
水の音聞ゆる室やあらひ鯉
春雨に鳥の古巣の濡る々ま々
まひまひの水の広さや花菖蒲
牡丹の崩れんとするに蝶来り
草を焼く煙流れて梅白し
漕ぎもどる童の舟に山葡萄
わが肩に触れたる枝の芽ぐみたる
石踏んでわたれば岩魚走りけり
山口青邨俳句集2
八重桜ちぎつて落す風に逢ふ
遊船に遅れし芸者川原ゆく
亀の子の迷ひ来れり梅雨の宿
牛がをり馬がをりたる花南瓜
おでん屋の屋台の下の秋田犬
月まはり来て照らしたる氷柱かな
どうしても見えぬ雲雀が鳴いてをり
ともしびにうすみどりなる春蚊かな
見えたりや筍掘りのマツチの火
鳴く虫の生れて居りぬ弁慶草
遊船に遅れし芸者川原ゆく
亀の子の迷ひ来れり梅雨の宿
牛がをり馬がをりたる花南瓜
おでん屋の屋台の下の秋田犬
月まはり来て照らしたる氷柱かな
どうしても見えぬ雲雀が鳴いてをり
ともしびにうすみどりなる春蚊かな
見えたりや筍掘りのマツチの火
鳴く虫の生れて居りぬ弁慶草
山口青邨俳句集3
草庵の甕に孑孑幸福に
犬行くや一筋町の片かげり
をなごらのたのしみきざむ若菜かな
波のくる砂に椿のさしてあり
燕の子ゐると思へば昼しづか
祖母山も傾山(かたむくさん)も夕立かな
まつくらな橋をくゞりし蛍かな
ひとそれぞれ書を読んでゐる良夜かな
冬の蜂われあはれめば彼われを
鮟鱇を吊せし下の魚かな
犬行くや一筋町の片かげり
をなごらのたのしみきざむ若菜かな
波のくる砂に椿のさしてあり
燕の子ゐると思へば昼しづか
祖母山も傾山(かたむくさん)も夕立かな
まつくらな橋をくゞりし蛍かな
ひとそれぞれ書を読んでゐる良夜かな
冬の蜂われあはれめば彼われを
鮟鱇を吊せし下の魚かな