芭蕉俳句集 其の一
枯れ枝に烏のとまりけり秋の暮
櫓の声浪をうつて腸氷る夜やなみだ
芭蕉野分して盥に雨を聞く夜哉
あさがほに我は飯くふおとこ哉
髭風を吹いて暮秋嘆ずるは誰が子ぞ
世にふるもさらに宗祇のやどり哉
馬ぼくぼく我をゑに見る夏野哉
野ざらしを心に風にしむ身哉
猿を聞く人捨子に秋の風いかに
道のべの木槿は馬にくはれけり
櫓の声浪をうつて腸氷る夜やなみだ
芭蕉野分して盥に雨を聞く夜哉
あさがほに我は飯くふおとこ哉
髭風を吹いて暮秋嘆ずるは誰が子ぞ
世にふるもさらに宗祇のやどり哉
馬ぼくぼく我をゑに見る夏野哉
野ざらしを心に風にしむ身哉
猿を聞く人捨子に秋の風いかに
道のべの木槿は馬にくはれけり
芭蕉俳句集 其の二
碪打ちて我にきかせよや坊が妻
秋風や藪も畠も不破の関
明けぼのやしら魚しろきこと一寸
狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉
海くれて鴨のこゑほのかに白し
年暮れぬ笠きて草履はきながら
春なれや名もなき山の薄霞
水とりや氷の僧の沓の音
山路来て何やらゆかしすみれ草
辛崎の松は花より朧にて
秋風や藪も畠も不破の関
明けぼのやしら魚しろきこと一寸
狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉
海くれて鴨のこゑほのかに白し
年暮れぬ笠きて草履はきながら
春なれや名もなき山の薄霞
水とりや氷の僧の沓の音
山路来て何やらゆかしすみれ草
辛崎の松は花より朧にて
芭蕉俳句集 其の三
つつじいけて其陰に干鱈さく女
よくみれば薺花さく垣ねかな
古池や蛙飛びこむ水のおと
名月や池をめぐりて夜もすがら
花の雲鐘は上野か浅草か
五月雨や桶の輪きるる夜の声
五月雨に鳰の浮巣を見に行かむ
蓑虫の音を聞きに来よ艸の庵
旅人と我が名よばれん初しぐれ
冬の日や馬上に氷る影法師
よくみれば薺花さく垣ねかな
古池や蛙飛びこむ水のおと
名月や池をめぐりて夜もすがら
花の雲鐘は上野か浅草か
五月雨や桶の輪きるる夜の声
五月雨に鳰の浮巣を見に行かむ
蓑虫の音を聞きに来よ艸の庵
旅人と我が名よばれん初しぐれ
冬の日や馬上に氷る影法師
芭蕉俳句集 其の四
鷹一つ見つけてうれしいらご崎
いざさらば雪見にころぶ所迄
春たちてまだ九日の野山かな
さまざまの事おもひ出す桜かな
雲雀より空にやすらふ峠哉
ほろほろと山吹ちるか滝の音
ちちははのしきりにこひし雉の声
一つぬひで後に負ひぬ衣がへ
若葉して御目の雫拭はばや
草臥れて宿かるころや藤の花
いざさらば雪見にころぶ所迄
春たちてまだ九日の野山かな
さまざまの事おもひ出す桜かな
雲雀より空にやすらふ峠哉
ほろほろと山吹ちるか滝の音
ちちははのしきりにこひし雉の声
一つぬひで後に負ひぬ衣がへ
若葉して御目の雫拭はばや
草臥れて宿かるころや藤の花
芭蕉俳句集 其の五
蛸壺やはかなき夢を夏の月
須磨寺やふかぬ笛きく木下やみ
此のあたり目に見ゆるものは皆涼し
おもしろうてやがて悲しき鵜飼哉
身にしみて大根からし秋の風
吹きとばす石はあさまの野分哉
声すみて北斗にひびく砧かな
草の戸も住替る代ぞひなの家
行く春や鳥啼き魚の目は泪
あらたうと青葉若葉の日の光
須磨寺やふかぬ笛きく木下やみ
此のあたり目に見ゆるものは皆涼し
おもしろうてやがて悲しき鵜飼哉
身にしみて大根からし秋の風
吹きとばす石はあさまの野分哉
声すみて北斗にひびく砧かな
草の戸も住替る代ぞひなの家
行く春や鳥啼き魚の目は泪
あらたうと青葉若葉の日の光