蕪村俳句 一
遊行柳のもとにて
柳散り清水涸れ石処々
古庭に鶯啼きぬ日もすがら
水桶にうなづきあふや瓜茄
夏河を越すうれしさよ手に草履
秋かぜのうごかしてゆく案山子哉
春の海終日のたりのたりかな
雷に小屋はやかれて瓜の花
狩ぎぬの袖の裏這ふほたる哉
川狩や帰去来といふ声す也
石工の飛火流るる清水哉
柳散り清水涸れ石処々
古庭に鶯啼きぬ日もすがら
水桶にうなづきあふや瓜茄
夏河を越すうれしさよ手に草履
秋かぜのうごかしてゆく案山子哉
春の海終日のたりのたりかな
雷に小屋はやかれて瓜の花
狩ぎぬの袖の裏這ふほたる哉
川狩や帰去来といふ声す也
石工の飛火流るる清水哉
蕪村俳句 二
青梅に眉あつめたる美人哉
古井戸や蚊に飛ぶ魚の音くらし
うは風に蚊の流れゆく野河かな
鮎くれてよらで過行夜半の門
行きゆきてここに行きゆく夏野哉
温泉の底に我足見ゆる今朝の秋
朝がほや一輪深き縁の色
四五人に月落ちかかるをどり哉
夕露や伏見の角力ちりぢりに
負まじき角力を寝ものがたり哉
古井戸や蚊に飛ぶ魚の音くらし
うは風に蚊の流れゆく野河かな
鮎くれてよらで過行夜半の門
行きゆきてここに行きゆく夏野哉
温泉の底に我足見ゆる今朝の秋
朝がほや一輪深き縁の色
四五人に月落ちかかるをどり哉
夕露や伏見の角力ちりぢりに
負まじき角力を寝ものがたり哉
蕪村俳句 三
小狐の何にむせけむ小萩はら
戸を叩く狸と秋ををしみけり
行秋やのこる物みな目にみゆる
楠の根を静にぬらすしぐれ哉
冬川やほとけの花の流れ去る
磯ちどり足をぬらして遊びけり
鰒汁の宿赤々と燈しけり
こがらしや何に世わたる家五軒
凩や広野にどうと吹き起こる
海鼠にも鍼こころむる書生哉
戸を叩く狸と秋ををしみけり
行秋やのこる物みな目にみゆる
楠の根を静にぬらすしぐれ哉
冬川やほとけの花の流れ去る
磯ちどり足をぬらして遊びけり
鰒汁の宿赤々と燈しけり
こがらしや何に世わたる家五軒
凩や広野にどうと吹き起こる
海鼠にも鍼こころむる書生哉
蕪村俳句 四
裾に置いて心に遠き火桶哉
寒月や門なき寺の天高し
闇の夜に終る暦の表紙かな
宿かせと刀投げ出す吹雪哉
凧きのふの空の有り所
春雨にぬれつつ屋根の手毬哉
藪入りの夢や小豆のにへる中
鶯の枝ふみはづすはつねかな
これきりに小道つきたり芹の中
寒月や門なき寺の天高し
闇の夜に終る暦の表紙かな
宿かせと刀投げ出す吹雪哉
凧きのふの空の有り所
春雨にぬれつつ屋根の手毬哉
藪入りの夢や小豆のにへる中
鶯の枝ふみはづすはつねかな
これきりに小道つきたり芹の中
蕪村俳句 五
古井戸のくらきに落る椿哉
春雨や小磯の小貝ぬるるほど
春雨や人住みてけぶり壁を洩る
物種の袋ぬらしつ春の雨
春の水山なき国を流れけり
春の夜や盥をこぼす町外れ
苗代にうれしき鮒の行方哉
衣替野路の人はつかに白し
富士ひとつうづみのこして若葉哉
牡丹散て打かさなりぬ二三片
春雨や小磯の小貝ぬるるほど
春雨や人住みてけぶり壁を洩る
物種の袋ぬらしつ春の雨
春の水山なき国を流れけり
春の夜や盥をこぼす町外れ
苗代にうれしき鮒の行方哉
衣替野路の人はつかに白し
富士ひとつうづみのこして若葉哉
牡丹散て打かさなりぬ二三片