<> 「たのしみは 春夏秋冬季語に逢ひ 詩歌管絃游びゐるとき」 @歌童 拙句集

【春の俳句 潮干狩】

 潮干狩

柳
鳥やはらかなはばたきを柳の芽

ぶらんこや赤いお靴が脱げさうよ

おしぼりは分厚きが佳しはだら雪

麦踏の武蔵野を踏む音もなく

寝転べば大地ずしりと百千鳥

弥生野は牛舌あぶるべき処

蝌蚪の群れ大き浮葉を押してゐる
ミモザ
一列の新しき墓ミモザ咲き

綿菓子を舐めてはしまふ舌日永

みどりごにまみえしその夜春の雷

春風や京の子どもら京言葉

三月の祇園に魚焼く匂ひ
風船
風船のひとかたまりがビルの空

入学児電車にゆられをり父と

啓蟄の藪のどこかはうごくべし

遠足の列蛇行して金鳳花キンポウゲ

すべり台すべり下りたる主婦暮春

うづ高き漁網かげろふ燃えてをり

くるぶしを海のながるる潮干狩

汐干狩




【春の俳句 行く春】

 行く春


梅ひとつひらいてをりぬ鳶のこゑ梅の花

紅梅の芽に掛かりたる柔毛(にこげ)かな

雪解けの枝にきてをり小鳥はも

まつすぐに石蓴(あをさ)のうへを舫ひ綱

冴返る蒼天マスト林立し

ヨーヨーや春の波涛へ投げては引きヨーヨー

入学児鴉のあくび見てをりぬ

かさなつて子豚眠れる花曇

三月や入りて鶏舎の薄暗き

頭(づ)にたんぽぽの綿載せて雀なり

童手をひらく土筆の束に鍵

春愁や土手に家鴨と吹かれ立ちアヒル

さす傘の中ひとめぐり蝶去りき

鳴きごゑは駅梁(うつばり)に初つばめ

捨てられしソファーに雨のお雛様

釣り竿のしなひて切れし糸暮春

ゆく春を素足が跳んでゐる渚渚






【冬の俳句 牡丹雪】

 牡丹雪

ふくろふの頭(かしら)まはせば夜になる

しづかにも時推し移る去年今年去年今年

山頂へ伸びゆくレール初詣

大鴉ゆさりと着地して迎春

墨の香の残れる冬の館かな

なまはげの四股踏みをれば海鳴りすなまはげ

霜の道たれか落とせし鈴ひとつ

裏山に眼鏡をかけし木菟が

暮れぎはの寒鯉の口への字なり

ベンチが並び牡丹雪降りやまず
ベンチ
雪晴のカラスの影のかるさかな

新雪を踏むわが音の遙かより

町凍てて雀が跳ねる陽が昇る

先生に叱られてゐる懐手

一月の顔ひとつ窓閉ぢにけり窓

奥嶺よりまつすぐに来し冬の禽(とり)

煮こごりや闇ずぶ濡れに雨が降る

老犬の視野の隅なる寒雀

咽喉(のど)ごゑは雪降る檻の虎なりき

探梅やうすれし文字の板塔婆


【冬の俳句 氷柱(つらら)】

 氷柱(つらら)


一帆は十一月の真ん中に

漁夫焚火己が火影のゆるるまで焚き火

冬の浜外せし手鞠弾まざる

冬の海朽木ごろんと鞠ぽんと

波音は己が外なり浮寝鳥

まだどこか急く心あり日向ぼこ

みづうみに誰も無言や返り花

海鼠(なまこ)噛む凍てたる雲をかむごとく

大寒のことに塗りたてポストかな
寒鯉
つぶやきの今聞こえしは寒鯉か

日差しあるたび太りたる氷柱かな

つららつらら氷柱つらなり月明り

天に割る嘴(くちばし)鶴の息白し

ゆで玉子上(へ)に塩粒の溶け聖夜ゆで玉子

寒稽古終へたる肩の息しをり

狐火や闇はゆらぎとしてありぬ

おでん喰ふときの息ハヒフヘホハフ

砂が砂洗つてゆくよ冬渚

犬の冬九十九里浜何もなき
スイセン
水仙や人間見ずにけふ一日






【夏の俳句 蝉時雨】

 蝉時雨京都3

京都歩くけふいちにちの蝉時雨

あめんぼ急ぐ水輪つくつて飛びこえて

万緑やどこ指さすもあをみどり

薔薇の園孤りの刺を抜きにけり
バラ園
顔の辺のかをるやバラを離れても

風のまま穂のまま梅雨の花落ちぬ

青梅雨やあゆみゆく夜のかぐはしく

星キラリ六月の雲切れにける

煙草火はしんじつうつつ蛍火もホタル

国立(くにたち)の梅雨学童ら傘カラフル

もぢもぢともぢもぢ籠の羽抜鳥

ハンケチのいちまい流れ雲の峰

青柿の落ちたる音や土に消えシャクトリムシ

曠野(あらの)行く指に尺取あそばせつ

病葉の落ちくる音の落ちにけり

ゴンドラがゆく岩燕ひるがへる

ひらくたび花火のまはり雲が湧き
花火
ガラス拭き西日の右手よくうごく

雷とほく舟小屋は綱ゆれてゐる

岩魚焼く煙の先や換気扇

夏果つと貝殻しまふ硝子器に

ガラス器


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